Unitree Roboticsの会社概要と成長の軌跡

Unitree Robotics(宇樹科技)は、2016年に王興興氏(Wang Xingxing)によって中国・杭州で設立されたロボティクス企業です。当初は四足歩行ロボット(Go1、Go2シリーズ)で知名度を高め、その後ヒューマノイドロボット分野にも参入しました。

同社の最大の強みは圧倒的なコストパフォーマンスです。G1ヒューマノイドロボットの価格が約$16,000(約240万円)からという破格の設定は、業界に衝撃を与えました。中国の製造エコシステムを最大限に活用し、高性能ながら低コストなロボットを実現しています。

主要マイルストーン

出来事意義
2016年Unitree Robotics設立(杭州)四足歩行ロボットの研究開発を開始
2019年Laikago発売初の商用四足ロボット。研究機関向け
2021年Go1発売($2,700〜)低価格四足ロボットで一般市場に参入
2023年Go2発売、H1プロトタイプ公開四足ロボットの進化版+ヒューマノイドへの参入
2024年H1量産開始、G1発表H1が歩行速度世界記録(3.3m/s)樹立
2025年G1量産開始、シリーズB+調達G1が$16,000で価格破壊、累計調達約1.5億ドル
2026年グローバル展開加速北米・欧州・日本での販売パートナーシップ拡大

四足ロボットGo2シリーズについて

Unitreeのルーツは四足歩行ロボットにあります。Go2は$1,600から購入可能で、研究者・教育機関・ホビイスト向けの世界的ベストセラーです。四足ロボットで培った歩行制御技術・モーター設計・量産ノウハウが、H1・G1のヒューマノイドロボット開発に直接活かされています。

資金調達と主要投資家

ラウンド時期調達額主要投資家
シリーズA2020年約1,000万ドル深圳創投、順为資本
シリーズB2023年約5,000万ドル美団(Meituan)、金沙江創投
シリーズB+2025年約9,000万ドルAlibaba、SoftBank Vision Fund Asia

累計調達額は約1.5億ドルで、TeslaやFigure AIと比べると小規模ですが、中国の製造コストの低さを考慮すると、この規模でも十分な開発・量産が可能です。特にAlibabaの出資は物流分野での大規模導入の布石と見られています。

Unitree H1の主要スペック

Unitree H1は、同社の初のヒューマノイドロボットとして2024年に量産が開始されました。最大の特徴は時速3.3m/s(約12km/h)という世界最速の二足歩行速度です。研究用途から産業用途まで幅広い応用を想定しています。

スペック項目詳細
身長180cm(5フィート11インチ)
体重47kg(104ポンド)
可搬重量3kg(両手合計・暫定)
自由度(DOF)26(脚6×2、腕5×2、胴体4)
歩行速度最大3.3m/s(約12km/h・世界記録)
バッテリーリチウムイオン(容量非公開)
連続稼働時間約2〜4時間(動作内容により変動)
アクチュエータ独自設計M107(高トルク密度モーター)
センサー3D LiDAR、深度カメラ、IMU
通信Wi-Fi、Ethernet
OS / SDKROS2対応、Python/C++ SDK
価格$90,000〜(研究用フルモデル)

H1の強みと技術的特徴

  • 世界最速の歩行:3.3m/sという歩行速度は二足歩行ロボットの世界記録。強化学習ベースのSim-to-Real制御で実現
  • 超軽量設計:47kgは同サイズのヒューマノイドとしては最軽量クラス。カーボンファイバーとアルミ合金のハイブリッド構造
  • 高トルク密度モーター:自社設計のM107アクチュエータは、トルク密度で業界トップクラス。コンパクトながら高出力
  • ROS2ネイティブ:研究者にとって馴染み深いROS2フレームワークに完全対応。既存のロボティクスツールチェーンとの統合が容易
  • オープンSDK:Python/C++のSDKが公開されており、サードパーティ開発者がアプリケーションを構築可能

H1は「研究プラットフォーム」としての性格が強く、大学や研究機関での採用が中心です。上半身の操作性能は開発途上であり、精密な手作業にはまだ課題がありますが、歩行性能と動的バランス制御は世界トップレベルです。

Unitree G1の主要スペック

Unitree G1は、H1の技術をベースにしたコンパクトモデルとして2024年に発表されました。最大の衝撃は$16,000(約240万円)からという価格設定で、ヒューマノイドロボットの大衆化を現実のものにしました。

スペック項目詳細
身長127cm(4フィート2インチ)
体重35kg(77ポンド)
可搬重量3kg(両手合計)
自由度(DOF)23〜43(構成により変動)
歩行速度最大2.0m/s(約7.2km/h)
バッテリーリチウムイオン(9,000mAh)
連続稼働時間約2時間(標準動作時)
アクチュエータ独自設計(小型高効率モーター)
センサー深度カメラ(Intel RealSense)、IMU
通信Wi-Fi、Bluetooth
OS / SDKROS2対応、Python/C++ SDK
価格$16,000〜(ベースモデル)/ $43,000〜(高機能モデル)

G1のモデル構成と価格帯

G1は複数の構成で提供されており、用途に応じてカスタマイズが可能です。

モデル価格自由度ハンド主な用途
G1 Basic$16,00023簡易グリッパー教育、デモ、基礎研究
G1 Standard$28,000293指ハンド研究開発、プロトタイピング
G1 Pro$43,00043多指ハンド(Dex3-1)高度な研究、デモ、産業検証

G1 Proの43自由度モデルは、多指ハンド「Dex3-1」を搭載し、複雑な物体操作が可能です。価格は$43,000とBasicの約3倍ですが、それでも競合ヒューマノイドの数分の1であり、コストパフォーマンスは圧倒的です。

なぜG1はこれほど安いのか?

G1の低価格を実現している要因は主に3つあります。(1) 中国・深圳を中心とした製造エコシステムの活用(部品コストが欧米の1/3〜1/5)、(2) 四足ロボットGo2で確立した量産技術の転用、(3) 小型化による材料コスト削減(H1の180cmに対しG1は127cm)。ただし、AI/ソフトウェア面では欧米企業と比べて発展途上であり、「ハードウェアのコスパは最高だが、知能化はユーザー側の開発に委ねる」という戦略です。

ヒューマノイドロボット業界の求人をチェック

求人一覧を見る

H1 vs G1 徹底比較

H1とG1はどちらもUnitreeのヒューマノイドロボットですが、サイズ・性能・価格・用途で大きく異なります。どちらを選ぶべきか、詳細に比較します。

比較項目H1G1
身長180cm127cm
体重47kg35kg
歩行速度3.3m/s(世界記録)2.0m/s
自由度2623〜43(構成次第)
可搬重量3kg3kg
駆動時間2〜4時間約2時間
価格$90,000〜$16,000〜$43,000
主な用途研究、屋外実証、高速移動タスク教育、研究開発、デモ、産業検証
対象ユーザー大学研究室、大企業R&D幅広い(個人研究者〜企業)
SDKROS2、Python/C++ROS2、Python/C++
コミュニティ研究者中心研究者+ホビイスト

H1とG1、どちらを選ぶべきか?

選定は以下の基準で判断できます。

  • H1を選ぶべき場合:人間と同等サイズの環境(工場、オフィス)での実証が必要、歩行性能・動的制御の研究がメインテーマ、予算が$90,000以上確保できる、屋外環境での実験を計画している
  • G1を選ぶべき場合:予算に制約がある(特にBasicモデル$16,000は圧倒的)、教育目的やデモ・展示での使用、マニピュレーション研究にPro版(43DOF)を使いたい、複数台導入してSwarm(群知能)の研究をしたい

日本の大学研究室の場合、科研費の範囲内でG1 Basicを購入できるケースも多く、「研究室に1台ヒューマノイドロボット」が現実的な選択肢になっています。企業R&Dセンターの場合は、本格的な実証にH1、予備研究やプロトタイピングにG1という使い分けが合理的です。

価格・レンタル・購入方法の詳細

UnitreeのH1・G1は、ヒューマノイドロボットとしては異例の「直接購入可能」な製品です。レンタルやリースの選択肢も広がっています。

購入方法と価格詳細

購入方法対象モデル価格納期備考
公式サイト直販G1 Basic$16,0004〜8週間国際配送可、関税別
公式サイト直販G1 Standard$28,0006〜10週間3指ハンド付属
公式サイト直販G1 Pro$43,0008〜12週間Dex3-1ハンド、43DOF
公式サイト直販H1$90,000〜要相談研究機関向け
日本代理店G1全モデル日本円表示(上乗せあり)4〜12週間技適対応、日本語サポート

レンタル・リースの選択肢

日本国内では、ロボットレンタル企業を通じたリース契約が可能になりつつあります。

サービス対象モデル月額目安最低期間含まれるサービス
短期レンタル(イベント向け)G115万〜30万円/月1ヶ月〜配送・設置・回収
研究用長期リースG1 / H110万〜50万円/月6ヶ月〜保守サポート付き
オリックス・レンテックG1要見積もり3ヶ月〜法人リース契約

レンタルの場合、機体保険やメンテナンス費用が月額に含まれるため、短期的な検証にはレンタルが合理的です。3年以上使用する場合は購入の方がトータルコストが低くなります。

日本への輸入時の注意点

Unitreeロボットを日本に直接輸入する場合、技適(技術基準適合証明)の取得状況を確認する必要があります。Wi-Fi/Bluetooth搭載機器は技適マークがないと日本国内での使用が違法になる可能性があります。日本の正規代理店を通じて購入する場合は技適対応済みのモデルが提供されるため安心です。

中国ロボティクスエコシステムの全体像

Unitreeが低コストで高品質なロボットを製造できる背景には、中国の強力なロボティクスエコシステムがあります。このエコシステムを理解することは、Unitreeでのキャリアや中国ロボティクス業界全体を把握する上で重要です。

中国の主要ヒューマノイドロボット企業

企業名本社主力ロボット資金調達特徴
Unitree Robotics杭州H1 / G1約1.5億ドル低コスト量産、歩行速度世界記録
UBTECH Robotics深圳Walker X約10億ドル+(IPO含む)香港上場、教育・サービス向け
Fourier Intelligence上海GR-2約2億ドルリハビリ用途からの発展、SoftBank出資
Kepler Robotics上海Kepler Forerunner約5,000万ドル工場特化型、早い量産体制
Agibot(智元機器人)上海Genie約1億ドル+Tesla出身者設立、BYD出資
Galbot深圳Galbot G1約8,000万ドルBYD大型出資、高い器用さ

中国政府は「2025年までにヒューマノイドロボットを戦略的新興産業に位置づける」という方針を打ち出しており、補助金や税制優遇を通じて業界全体を後押ししています。この政策的な追い風も、中国ロボティクス企業の急成長を支えています。

日本でのUnitreeロボット入手方法と展開状況

Unitreeは日本市場に早くから注目しており、四足ロボットGo2シリーズを通じて日本の研究機関や企業にすでに多くの導入実績があります。ヒューマノイドロボットの日本展開も着実に進んでいます。

日本の正規代理店と購入先

  • 公式サイト直販:unitree.com から直接注文可能。日本への国際配送に対応。関税・消費税は着払い
  • SWITCH SCIENCE(スイッチサイエンス):電子部品通販大手。Go2シリーズを取り扱い中で、G1の取り扱い検討中
  • ロボットショップ各社:日本のロボット専門販売店でのG1取り扱いが増加中
  • 研究機関向け代理店:大学・研究所への納入実績がある専門代理店を通じた購入も可能

日本の研究者・企業がG1を導入する場合、科研費や中小企業の研究開発補助金を活用できるケースがあります。G1 Basicの$16,000(約240万円)は、多くの補助金の補助対象上限内に収まる金額です。

日本での導入事例と用途

分野導入先(例)用途使用モデル
大学研究東京大学、大阪大学歩行制御研究、AI制御実験H1、G1 Pro
企業R&D自動車メーカー、電機メーカーHRI研究、プロトタイピングG1 Standard
展示・デモ展示会、企業イベントロボットデモンストレーションG1 Basic
教育高専、専門学校ロボティクス教育G1 Basic
エンターテインメントテーマパーク、イベントパフォーマンス、案内G1

日本市場でのUnitreeの強みは、やはり価格です。同等サイズのヒューマノイドロボット(NASAのValkyrie等)は数千万〜数億円するのに対し、G1は数百万円で購入可能です。「ヒューマノイドロボットを1台買ってみる」ハードルが大幅に下がっています。

H1・G1のユースケース別活用法

Unitreeのヒューマノイドロボットは、研究・デモ・屋外実証など多様なシーンで活用されています。ユースケース別にどのモデルが適しているかをまとめます。

研究・デモ・屋外での活用

ユースケース推奨モデル活用のポイント
歩行制御研究H1世界最速の歩行データを研究に活用。強化学習の実環境テストに最適
マニピュレーション研究G1 Pro43DOF・多指ハンドで精密操作の研究。低コストで複数台導入可能
HRI(人間ロボット相互作用)研究G1 Standardコンパクトサイズで人間との近距離インタラクションに適する
企業展示・デモG1 Basic$16,000の低コストで来場者への視覚的インパクトが大きい
屋外移動・点検H1高い歩行安定性と速度。屋外の不整地歩行でも転倒しにくい
教育(ロボティクス授業)G1 BasicROS2対応で教材として最適。学生が直接プログラミング可能
Swarm研究(群知能)G1 Basic(複数台)$16,000×数台で群ロボットの協調行動を研究可能

Unitreeおよび関連企業でのキャリアと求人

Unitree Robotics本社での直接雇用だけでなく、日本の代理店や研究機関でもUnitreeロボットに関わるキャリアパスが広がっています。

Unitree本社での求人

職種年収(中国元)年収(日本円換算)必要スキル
ロボティクスエンジニア40万〜80万元約830万〜1,660万円ROS2、C++、制御理論
AIエンジニア50万〜100万元約1,040万〜2,080万円強化学習、Sim-to-Real、PyTorch
メカニカルエンジニア30万〜60万元約625万〜1,250万円3D CAD、モーター設計
製造エンジニア25万〜50万元約520万〜1,040万円量産技術、品質管理
海外営業30万〜70万元約625万〜1,460万円英語/日本語、技術営業

Unitreeは外国人の採用にも積極的で、特に日本市場の開拓を担う営業・マーケティング人材を求めています。杭州本社は中国のIT・ロボティクスハブとして生活コストが上海・北京より低く、実質的な生活水準は高いです。

  • 代理店の営業・テクニカルサポート:Unitree製品を日本市場で販売する代理店企業での職種。年収450万〜800万円
  • 大学研究員:Unitreeロボットを用いた研究プロジェクトの研究員・ポスドク。年収400万〜700万円
  • ロボットSIer:Unitreeロボットを活用したソリューション開発を行うSIer企業のエンジニア。年収500万〜900万円
  • ロボットインストラクター:教育機関でUnitreeロボットを使ったプログラミング教育を担当。年収350万〜600万円
  • ロボット動画クリエイター:Unitreeロボットを使ったデモ動画・技術解説動画の制作。フリーランスで年収500万〜1,000万円

Unitreeを使ったOSS開発

Unitreeのロボットは開発者に優しいオープンSDKを提供しているため、OSSコミュニティでの開発活動がキャリアにつながります。GitHubでUnitreeロボット向けのパッケージやツールを公開し、コミュニティで評価を得ることが、Unitree本社やロボティクス企業への就職に直結するケースが増えています。

開発者向け:SDK・APIとエコシステム

Unitreeロボットの大きな魅力の一つが、充実した開発者向けツールチェーンです。H1・G1の両方でROS2ネイティブ対応が実現されており、ロボティクスエンジニアにとって使い慣れた環境で開発が可能です。

SDK構成と対応言語

SDK / ツール対応言語主な機能対応モデル
unitree_sdk2Python / C++モーション制御、センサーデータ取得、テレメトリH1、G1
unitree_ros2C++(ROS2パッケージ)ROS2トピック/サービス、tf2、rviz2連携H1、G1
unitree_mujocoPythonMuJoCoシミュレーション環境、Sim-to-RealH1、G1
unitree_isaacPythonNVIDIA Isaac Sim連携、大規模並列シミュレーションH1、G1
Unitree Developer Portal-ドキュメント、チュートリアル、コミュニティフォーラム全モデル

開発者がはじめるためのロードマップ

UnitreeのH1・G1を使った開発を始めるためのステップを紹介します。

ステップ内容必要なもの
1. シミュレーション環境構築MuJoCoまたはIsaac SimでG1/H1のシミュレーションを構築PC(GPU推奨)、Python環境
2. 基本制御の習得SDKを使って歩行、姿勢制御、センサーデータ取得を試すunitree_sdk2、シミュレータ
3. ROS2連携ROS2パッケージを使ってNavigation、SLAMなど既存ツールと連携ROS2 Humble/Jazzy
4. AI制御の実装強化学習モデルを訓練し、Sim-to-Realで実機に転移GPU(学習用)、実機(転移用)
5. 実機テストシミュレーションで検証した制御をG1/H1実機でテストG1またはH1実機

ステップ1〜3まではロボット実機がなくてもシミュレーション上で進められます。実機を購入する前にシミュレーションで十分に検証することで、開発効率が大幅に向上します。GitHubのunitreeroboticsリポジトリに全SDKとサンプルコードが公開されています。

Sim-to-Realの重要性

Unitreeのロボットはシミュレーション(Sim)で訓練したAIモデルを実機(Real)に転移するSim-to-Realアプローチを公式にサポートしています。H1の世界記録歩行速度もSim-to-Realで達成されました。MuJoCoやIsaac Simでの物理シミュレーション経験は、Unitreeロボットを使った研究・開発において最も重要なスキルの一つです。