Figure AIとは――26億ドル評価額の急成長ヒューマノイド企業

Figure AI(フィギュア・エーアイ)は、2022年にブレット・アドコック(Brett Adcock)がカリフォルニア州サニーベールに設立した汎用ヒューマノイドロボット企業です。創業からわずか2年余りで評価額26億ドル(約3,900億円)に到達し、シリコンバレーのロボティクス系スタートアップとして最速クラスの成長を遂げています。

最大の特徴は超強力な投資家連合です。Microsoft、OpenAI、NVIDIA、Amazon創業者ジェフ・ベゾスの個人ファンドBezos Expeditions、Intel Capitalという、AI・テック業界の最重要プレイヤーが揃ってFigure AIに出資しています。この顔ぶれは単なる資金調達以上の意味を持ち、クラウドコンピューティング(Azure/AWS)・最先端AIモデル(OpenAI)・AI半導体(NVIDIA/Intel)との深い技術連携の布石と読み解けます。

2024年3月には主力製品「Figure 02」を発表。同年後半にはBMWのサウスカロライナ州スパルタンバーグ工場での商業稼働を開始し、ヒューマノイドロボットが実際の自動車製造ラインで日常的に稼働するという業界の歴史的マイルストーンを達成しました。本記事では、Figure AIおよびFigure 02の技術的概要・投資背景・採用情報・必要スキルを日本語で詳しく解説します。

設立者ブレット・アドコックとは

Figure AI CEOのブレット・アドコックは連続起業家で、求人プラットフォームVettery(2018年にAdeccoへ売却)と航空モビリティ企業Archer Aviation(2021年にNYSE上場)を創業した経歴を持ちます。テクノロジー企業の事業化と上場に精通したCEOが率いており、Figure AIの商業展開スピードはその経験値を色濃く反映しています。

資金調達・投資家一覧

Figure AIが実施した資金調達ラウンドと主要投資家を整理します。

ラウンド時期調達額主要投資家評価額
シード2022年非公開ブレット・アドコック個人非公開
シリーズA2023年7,000万ドルParkway Venture Capital他4億ドル
シリーズB2024年2月6億7,500万ドルMicrosoft、OpenAI、NVIDIA、Bezos Expeditions、Intel Capital、ARK Invest他26億ドル

シリーズBラウンドの6億7,500万ドルは、ロボティクス系スタートアップとしては当時最大規模の単一ラウンド調達のひとつです。MicrosoftはAzureクラウドインフラ供給、OpenAIはAIモデル統合、NVIDIAはGPU・Jetsonプラットフォーム供給という形で、資金に加えて技術・インフラ面でもエコシステムを形成しています。

Figure AIのミッションと事業戦略

Figure AIのミッションは「人間の身体労働をロボットに移管することで、人間をより創造的・意味のある仕事に解放する」ことです。具体的な事業戦略は以下の3段階で構成されています。

  • フェーズ1(現在):産業展開――自動車・物流・倉庫等の製造・搬送現場でFigure 02を商業稼働させ、実データを収集しながら信頼性と収益基盤を確立
  • フェーズ2(近未来):横展開――自動車以外の製造業・小売・建設・農業等の多様な産業に展開。Robot-as-a-Service(RaaS)モデルで月額課金型の安定収益を構築
  • フェーズ3(長期):汎用化――家庭・医療・介護等への汎用展開。AIの進化に伴いタスク適応能力を高め、真の「汎用ロボット」を目指す

産業分野を先行させることで、安全性・耐久性・信頼性の実績を積んでから家庭・医療などリスク要件の高い市場へ進出するというアプローチは、同業他社のFigure AIが産業先行戦略を明示的に選択していることの理由でもあります。

Figure 02のスペックと技術的特徴

Figure 02はFigure AIの第2世代汎用ヒューマノイドロボットで、初代Figure 01の商業展開実績を踏まえた大幅な改良版です。「人間の仕事環境でそのまま使える」という設計思想のもと、人間の身体サイズ・可搬重量・長時間稼働要件に合わせた仕様になっています。

Figure 02主要スペック一覧

スペック項目Figure 02
身長約168cm(5フィート6インチ)――人間の成人男性とほぼ同サイズ
体重約70kg――人間の成人に近い重量設計
バッテリー稼働時間最大16時間――1シフト(8時間)を超える連続稼働が可能
可搬重量(片手)最大20kg――重い工業部品や箱の持ち運びに対応
歩行速度最大1.2m/s――人間の早歩きに近いスピード
関節自由度全身43自由度――人間に近い動作範囲を実現
手部設計5指ロボットハンド(16自由度)――精密把持から力把持まで対応
センサーカメラ(複数眼)、深度センサー、IMU、触覚センサー(指先)
AI処理オンボードGPU(NVIDIA系)+クラウドオフロード
AIモデルHeliotrope(Figure AI独自開発の大規模行動AIモデル)
コミュニケーション自然言語での対話・指示受け付け(OpenAI統合)
充電方式自動充電ドック対応(人の介助なしに充電可能)
IP等級工業環境対応(粉塵・一定の湿気に対応)
商業展開先(初)BMW スパルタンバーグ工場(サウスカロライナ州)

16時間バッテリーの産業的意義

多くの競合ヒューマノイドのバッテリー稼働時間が1〜4時間程度であるのに対し、Figure 02の最大16時間稼働は製造現場の1シフト(8〜12時間)を人の介助なしにカバーできることを意味します。交代要員のコスト・充電管理の手間を大幅に削減し、工場のROI計算を根本的に変える仕様です。

Heliotrope AIモデルとCovariant買収

Figure 02の「頭脳」として機能するのが、Figure AI独自開発の大規模行動AIモデル「Heliotrope」です。このモデルの開発には、2024年に実施したCovariant(コバリアント)の買収が大きく貢献しています。

  • Covariantとは:UC Berkeley発のロボット向けAIスタートアップ。ピッキング・仕分けなどの産業ロボット向けに「RFM-1(Robotics Foundation Model 1)」という大規模行動モデルを開発していた。主要メンバーはDeep Mind・OpenAI・Berkeley AI Research出身者
  • 買収の狙い:Covariantのモデル・データ・研究者チームを丸ごと取り込むことで、Figure AIのAIモデル開発速度を飛躍的に加速。Covariantが蓄積した産業ロボット動作データと研究知見がHeliotropeの礎になった
  • Heliotropeの特徴:自然言語による指示理解(OpenAIモデル統合)・視覚情報からの物体認識・把持計画・全身動作生成を統合した大規模マルチモーダルモデル。「新しいタスクを指示するだけでロボットが学習・適応できる」汎用性を目標とする

Heliotropeの存在は、Figure AIが単なる「ロボットのハードウェア企業」ではなく、「AIモデルとロボットを統合するプラットフォーム企業」を目指していることを示しています。この方向性は、採用でもAIモデル開発・Sim-to-Real・データエンジニアリングの人材を重視することに直結しています。

BMW スパルタンバーグ工場での稼働実績

Figure 02の最も注目すべき実績は、BMWのサウスカロライナ州スパルタンバーグ製造工場での商業稼働です。スパルタンバーグ工場はBMW最大規模の生産拠点で、年間30万台以上のSUV(X3・X4・X5・X6・X7シリーズ等)を生産しています。

  • 担当タスク:車体部品の搬送・積み替え、ボディパネルのラッキング(治具への取り付け)などの繰り返し作業。人間が担当していた筋骨格系負担の大きい重量物取り扱いタスクを代替
  • 稼働形態:人間の作業者と同じ製造ラインに並んで稼働。従来の産業用アーム型ロボットと異なり、専用ブースや安全柵なしに人間と共存するコラボレーティブな運用を実現
  • 成果の意義:「ヒューマノイドロボットが実際の自動車生産ラインで日常的に稼働する」という業界初の実証事例。同業他社の競合(Agility Robotics・Tesla等)に対して明確な先行アドバンテージを確立
  • 今後の展開:BMW以外の自動車メーカー・物流倉庫・食品加工等への展開が計画されており、稼働台数の急増が見込まれている

Figure AIの採用情報・求人カテゴリー

Figure AIは2026年時点で約500〜700名規模の組織に拡大しており、本社はカリフォルニア州サニーベール(Sunnyvale)に置いています。BMW工場稼働の開始により商業展開フェーズに移行したため、採用規模を急速に拡大中です。エンジニアリング・AI研究・製品管理・フィールドオペレーションなど幅広い職種で求人が出ています。

職種カテゴリーと年収レンジ

職種カテゴリー代表的なポジション年収レンジ(USD)採用優先度
Embodied AI / Robot LearningRobot Learning Engineer、Behavior Policy Researcher、Imitation Learning Engineer$160K〜$300K+最高
AI / ML EngineeringAI Software Engineer、ML Infrastructure Engineer、Training Pipeline Engineer$150K〜$270K最高
Locomotion / ControlsLocomotion Engineer、Whole-Body Control Engineer、Controls Systems Engineer$140K〜$230K
PerceptionPerception Engineer、3D Vision Engineer、Sensor Fusion Engineer$140K〜$240K
Mechanical EngineeringMechanical Design Engineer、Actuator Engineer、Structural Analysis Engineer$120K〜$200K中〜高
Electrical / FirmwareEmbedded SW Engineer、Motor Control Engineer、Power Systems Engineer$130K〜$210K中〜高
Field OperationsField Application Engineer、Robot Deployment Specialist、Technical Support Engineer$90K〜$160K高(急増中)
Software PlatformDevOps Engineer、Robotics SW Infrastructure、Simulation Engineer$130K〜$210K
Product & ProgramTechnical Program Manager、Product Manager(Robotics)$150K〜$250K

特に採用が急拡大しているのはEmbodied AI / Robot LearningField Operationsの2カテゴリーです。HeliotropeモデルとFigure 02の行動学習を高度化するAI研究者は最高水準の報酬が提示され、BMW展開の成功を受けて増加する現場稼働を支えるField Engineerも急募となっています。

サニーベール本社の勤務環境

Figure AIの本社があるカリフォルニア州サニーベールは、シリコンバレーの中核都市のひとつで、Apple・Google・LinkedIn・AMD等の主要テック企業が集積するエリアです。

  • 本社施設:ハードウェア製造・ロボット試験ライン・AIデータセンターを擁する大規模施設。「工場のような研究所」として設計されており、設計→製造→テストのサイクルを社内完結させる体制
  • カルチャー:スタートアップのスピード感を維持しながら、商業展開フェーズに対応したプロセス化が進行中。「動く実機で毎日テストする」ハードウェアファースト文化が特徴
  • 生活コスト:サニーベール周辺(シリコンバレー)は米国でも最高水準の生活コスト。1LDK賃貸で月3,000〜4,500ドルが相場。上記年収レンジはその生活コストを反映した水準
  • リモートワーク:ハードウェア系・Field系はオンサイト必須。AI/MLエンジニアは週3〜4日出社のハイブリッドが一般的。フルリモートはごく一部のソフトウェア職に限定

Covariant買収による研究人材の厚み

2024年のCovariant買収により、UC Berkeley・DeepMind・OpenAI出身の一流AI研究者チームがFigure AIに合流しました。これにより研究開発の水準が大幅に向上し、競合他社との技術差別化が加速しています。このチームと共に働けることが、Figure AI入社の大きな魅力のひとつです。

報酬パッケージの詳細

Figure AIの報酬パッケージは基本給・株式報酬・ボーナスの3要素で構成されています。

  • 基本給:上記テーブルに記載の通り。ポジション・経験年数・スキルレベルにより決定。交渉余地あり
  • ストックオプション(RSU):全従業員に付与。評価額26億ドルのスタートアップであり、IPOまたは買収時に大きな利益機会。付与額は職位によって異なり、上位エンジニアは数十万〜数百万ドル相当のRSUが付与されるケースも
  • ボーナス:業績連動型年次ボーナス(一般的に基本給の10〜20%相当)
  • 福利厚生:医療・歯科・視力保険(本人・家族)、401(k) マッチング、フレキシブル休暇(Unlimited PTO)、産前産後・育児休業、ウェルネス補助金
  • 学習支援:学会参加費(ICRA・CoRL・NeurIPS等)、論文購読費、外部研修費の全額補助

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Figure AIエンジニアに求められるスキル

Figure AIの採用で重視されるスキルは、「AIモデルと物理ロボットを統合して商業環境で動かす」という同社の技術的使命に直結しています。純粋なAI研究力と、実機での信頼性・安全性を担保するエンジニアリング能力の両方が求められます。

Robot Learning・Embodied AIスキル

Figure AIが最も積極的に採用しているのはRobot Learning分野の専門家です。Heliotropeモデルの開発・改善に直接関わるこの領域は、最高水準の報酬と最も高い採用優先度が設定されています。

スキル領域具体的な技術・知識重要度
模倣学習行動クローニング(BC)、DAgger、GAIL、ACT(Action Chunking with Transformers)。遠隔操作デモデータからの学習非常に高い
強化学習PPO、SAC、TD3、DDPG。シミュレーション内方策学習とSim-to-Real転移。Curriculum Learning非常に高い
大規模行動モデルTransformer・Diffusion Policyによる行動生成。RT-2・Pi0等のVLAモデルの理解と実装非常に高い
MLフレームワークPyTorch(必須)、JAX(優遇)。大規模分散学習(PyTorch DDP/FSDP)高い
データエンジニアリングロボット動作データの収集・前処理・アノテーション。大規模データパイプライン設計(TB〜PBスケール)高い
シミュレーションIsaac Sim、MuJoCo、Genesis。フォトリアリスティックシミュレーション環境の構築高い

制御・歩行・全身動作計画スキル

Figure 02が製造現場で安全・確実に動くための制御工学スキルは、商業展開フェーズの今特に重要視されています。

  • 全身動作制御(Whole-Body Control):腕・脚・胴体を協調させて複雑なタスクを実行するWBC(Whole-Body Controller)の設計・実装。QP(二次計画法)ベースのリアルタイム最適化制御
  • 歩行制御:MPC(モデル予測制御)、LQR、ZMP制御、Raibert Controllerなどの二足歩行制御理論。不整地・段差・搬送中の動的安定性
  • インピーダンス制御・力制御:工場環境での物体操作・嵌合・組付けに必要な力制御設計
  • ROS 2:ロボットシステム構築の標準フレームワーク。Nav2・MoveIt2等の主要パッケージの実用経験
  • C++とリアルタイム制御:1kHz以上の制御ループを安定動作させるためのC++実装力。リアルタイムOS(RT-PREEMPT等)の知識

Perception・コンピュータビジョンスキル

工場内でFigure 02が部品・人間・障害物を認識するためのPerceptionシステム開発スキルが求められます。

  • 3Dビジョン:点群処理(Open3D、PCL)、深度センサーフュージョン(RealSense、Zed)、NeRFやGaussian Splattingによる3D環境モデリング
  • 物体認識・6DoFポーズ推定:未知物体のポーズ推定(FoundationPose、GenPose等)。製造部品の高速・高精度検出
  • センサーフュージョン:カメラ・LiDAR・IMUのデータ統合。EKF/UKFによる状態推定
  • VLM(視覚言語モデル)統合:GPT-4V・LLaVA等のVLMをPerceptionパイプラインに統合し、自然言語による物体指示を実現する実装経験

Field Operations・展開エンジニアスキル

BMW工場での稼働開始を受けて急増しているField Application Engineerには、技術力と顧客対応力の両方が求められます。

  • ロボット実機デバッグ:稼働中のロボットの異常診断・ソフトウェアアップデート・センサー校正・アクチュエータ交換。製造現場の環境下での実務経験
  • 顧客技術サポート:エンジニアではない製造現場の作業者・管理者への技術説明。インシデント対応と根本原因分析(RCA)
  • データ収集・フィードバック:現場稼働データをHeliotropeモデルの改善にフィードバックするデータ収集パイプラインの運用
  • 安全管理:製造現場の安全規制(OSHA等)準拠。人間・ロボット共存環境の安全運用プロトコル策定

Figure 02と競合ヒューマノイドの比較

ヒューマノイドロボット業界はFigure AI以外にも多数のプレイヤーが競合しています。転職・就職先を検討する際の参考として、主要競合他社との比較を整理します。

主要ヒューマノイド企業・製品比較

企業・製品身長/体重稼働時間商業展開主なバッカー採用地
Figure AI / Figure 02168cm / 70kg最大16時間BMW工場(2024年〜)Microsoft、OpenAI、NVIDIA、Bezosサニーベール(CA)
Tesla / Optimus Gen 2173cm / 57kg非公開テスラ工場内(2025年〜)Tesla(自社開発)テキサス州オースティン
Boston Dynamics / Atlas(電動版)150cm / 89kg非公開Hyundai工場テスト中Hyundaiウォルサム(MA)
Agility Robotics / Digit175cm / 65kg約4時間Amazon倉庫テスト中Amazonコーバリス(OR)
1X Technologies / NEO165cm / 30kg非公開家庭向け先行配送(2024年〜)OpenAIノルウェー/サニーベール
Apptronik / Apollo170cm / 72kg最大4時間GXO物流倉庫テスト中Googleオースティン(TX)

Figure 02が競合と最も差別化されている点は16時間バッテリー稼働BMWでの本格商業稼働実績の組み合わせです。「ヒューマノイドが工場で実際に働いている」という商業実績を持つ企業は2026年時点でも極めて少なく、Figure AIはこのリードを活かして資金調達・追加受注・採用競争において優位に立っています。

Figure AIとTesla Optimusの比較

市場で最も注目される比較がFigure AIとTeslaのOptimus(テスラボット)です。両社はともに汎用ヒューマノイドとして産業展開を先行させている点で類似していますが、以下の点で大きく異なります。

  • 開発リソース:Teslaは自動車・エネルギー・FSDの量産経験から生まれた製造インフラ・データ収集力・半導体開発力(Dojo/FSD Chip)を持つ。Figure AIはAI研究・ソフトウェア開発に特化したスタートアップとして機動力で対抗
  • AI統合:Figure AIはOpenAIと深く連携し、最先端の言語・視覚AIをHeliotropeに統合するアプローチ。TeslaはFSD(完全自動運転)で蓄積したビジョンベースAI技術をOptimusに転用するアプローチ
  • 商業展開の速度:Figure AIはBMWとの契約を2024年に開始し先行。Teslaはより内製的に自社工場でテストを重ねてから外部展開するアプローチを取る傾向
  • スケール:Teslaは将来的に年間数百万台の量産を目標に掲げるが、Figure AIは高品質・高価格帯での展開を優先

日本からFigure AIに応募する方法

日本在住のエンジニア・研究者がFigure AIに応募することは可能です。ただしFigure AIの本社はカリフォルニア州サニーベールであり、大半のポジションはオンサイト勤務が前提のため、採用された場合は米国への移住が必要になります。以下、応募から入社までの実際的な流れを解説します。

応募プロセスと選考フロー

Figure AIの採用選考は一般的に以下の流れで進みます。

  • Step 1: 応募――公式キャリアページ(figure.ai/careers)から希望ポジションに応募。英文レジュメ(CV)と英文カバーレターが必要。GitHubやarXiv論文のURLを添付することで評価が大幅に向上する
  • Step 2: スクリーニング――リクルーターとの30分の電話またはビデオ面談。職務経験・志望動機・ビザステータスの確認が中心
  • Step 3: テクニカルスクリーニング――担当エンジニアとの1時間のビデオ面談。Robot Learning志望であれば強化学習・模倣学習の概念とコード実装を問う。Controls志望であれば制御理論の応用問題
  • Step 4: オンサイトループ――サニーベール本社への来訪(交通費・宿泊費はFigure AI負担)。4〜6名の面接官と個別に1時間ずつ。技術問題・システム設計・カルチャーフィット・マネージャー面談
  • Step 5: オファー――合格後1〜2週間でオファーレター。年収・RSU額・入社日・ビザスポンサーの可否が明記される

GitHubとarXivが選考の鍵

Figure AIのリクルーターは応募者のGitHubとarXivを必ず確認します。ロボット学習・制御・Perceptionに関するコードをGitHubで公開していること、または国際学会(ICRA・CoRL・RSS・NeurIPS)に筆頭著者として投稿・採択された論文があることが、書類選考突破の有力な根拠になります。

ビザスポンサーシップと移住支援

日本国籍の候補者が米国で就労するには就労ビザが必要です。Figure AIのビザ対応状況を整理します。

  • H-1Bビザ:米国で専門職として就労するための最一般的なビザ。毎年4月に行われる抽選(年間約65,000件+修士以上2万件の枠)で選ばれる必要あり。Figure AIはスポンサー企業として申請を支援するが、抽選通過の保証はない
  • O-1Aビザ(卓越能力者ビザ):学術・研究分野で卓越した能力を持つ人材に対して発行される特別ビザ。抽選なしで申請可能。国際学会での受賞・多数の論文引用・著名機関での研究実績等が条件。Figure AIはO-1Aビザ申請も支援する
  • TN・E-3ビザ:日本人には該当しないため考慮不要
  • 移住支援:引越し費用補助(通常$10,000〜$20,000程度)、一時滞在費補助、住居探しサポートを含む移住パッケージを提供

日本からの現実的な準備ステップ

Figure AIへの応募を目指す日本在住エンジニア・研究者に向けた、現実的な準備ステップを提示します。

  • 技術的な準備:Robot Learningを目指すなら模倣学習・強化学習の実装をGitHubで公開。国内の大学・研究機関でCoRL・ICRA等へ論文を投稿。Controls志望ならROSを使った実機ロボット制御のポートフォリオを構築
  • 英語の準備:技術英語での対話力が必須。英語での技術発表(学会・勉強会)やOSSコントリビューション(英語のissue・PRコメント)で実践力を磨く。目安:TOEIC 900点以上またはIELTS 7.0以上
  • ネットワーキング:ICRA(国際ロボット学会)・CoRL(Conference on Robot Learning)・RSSへの参加。Figure AIの研究者がSNSやarXivで公開している論文をフォローし、実名で質問・フィードバックを行うことでリクルーターの目に留まりやすくなる
  • 国内ステップアップ:ソフトバンクロボティクス・川崎重工・東京大学・OIST・産総研でのヒューマノイド関連業務経験を経てから応募するルートも有効

Figure AIへの入社難易度はGoogleやMetaのAI部門と同等かそれ以上とされています。技術力の証明(論文・コード)と英語力の両立が最大の関門です。しかし、近年は国際学会での日本人研究者の採用事例も増加しており、十分な準備を経れば現実的な選択肢です。

産業用ヒューマノイド市場の将来性とキャリア展望

Figure AIが象徴する産業用ヒューマノイド市場は、今後10年間で爆発的な成長が予測される注目セクターです。Goldman Sachsの試算では2035年に最大1,540億ドル規模に到達する可能性があり、その先行者として経験を積んだ人材の市場価値は今後10〜20年にわたって高い水準を維持すると見られています。

産業用ヒューマノイド市場を牽引する要因

産業ヒューマノイドの急速な普及を後押しする構造的要因を整理します。

  • 労働力不足の深刻化:自動車・物流・食品加工等の製造業で、若年労働者の減少と高齢化による人手不足が深刻化。日本・ドイツ・米国で共通した問題であり、ヒューマノイドによる代替需要が急速に拡大中
  • AIモデルの急速な進化:大規模言語モデル・視覚言語モデルの能力が指数関数的に向上し、ロボットの「頭脳」のコストが急低下。2020年時点では不可能だったタスク適応が、2026年には日常的に実現されるようになった
  • 半導体・アクチュエータコストの低下:NVIDIA Jetsonシリーズ等のエッジAIチップ、電動アクチュエータの量産化によりロボット本体のコストが毎年10〜20%のペースで低下。ROIが成立するユースケースが拡大中
  • 大手テック企業の参入:Microsoft・Amazon・NVIDIA・Google等の資金・技術・チャネルを持つ巨大企業が産業ヒューマノイドに本格投資。市場の信用度と成長速度が一気に引き上げられた
  • 製造業のフレキシビリティ需要:専用自動化ラインに比べてヒューマノイドは製品切り替えへの適応が容易。多品種少量生産・頻繁なモデルチェンジが求められる現代製造業のニーズに合致

産業ヒューマノイドエンジニアのキャリア展望

産業用ヒューマノイド分野におけるキャリアの時系列的な展望を示します。

時期市場フェーズ主な採用ニーズ給与水準の見通し
2026〜2028年初期商業展開期Robot Learning・Controls・Field Ops。採用数は限定的だが入社できれば稀少な先行者経験現在水準($130K〜$300K)を維持または上昇
2028〜2032年量産・急拡大期製造・品質管理・フィールドエンジニア・カスタマーサクセスが急増。ソフトウェアプラットフォームエンジニアも大量採用希少性低下で一部職種は頭打ちも。AIモデル専門家は引き続き高給
2032年〜成熟・標準化期保守・ソフトウェアサポート・規制対応エンジニアの安定需要。産業標準策定への関与が重要安定した中上位報酬帯で推移。次世代技術(汎用AIロボット)先行者が高給を獲得

Figure AIのような先行企業で2026〜2028年に経験を積んだエンジニアは、産業ヒューマノイドが成熟した後も「業界の基盤を構築した人材」として極めて高い市場価値を持ち続けると見られています。今がこの業界に飛び込む最適なタイミングのひとつです。

日本市場でのFigure AIと関連ビジネスの展望

日本はFigure AIにとって重要な市場として位置づけられています。以下の点から、日本においてFigure AI関連のキャリア・ビジネス機会が今後数年で拡大することが期待されます。

  • 自動車産業との親和性:BMWでの実績を踏まえ、トヨタ・ホンダ・日産等日本の自動車メーカーとの連携協議が進む可能性。日本の製造現場へのFigure 02導入が実現すれば、現地サポートエンジニアの需要が生まれる
  • 日本代理店・パートナー企業:Figure AIが日本法人を設立するか、既存ロボットシステムインテグレーター(SIer)との代理店契約を結んだ場合、国内でのキャリア機会が創出される
  • 競合他社での経験蓄積:トヨタリサーチインスティテュート(TRI)、ソフトバンクロボティクス、川崎重工ロボティクス、FANUC等でヒューマノイド・協調ロボット関連業務を経験し、将来のFigure AI転職に備える道も現実的

Figure AIの日本語公式情報

2026年時点でFigure AIの公式日本語サイトは存在しません。採用情報はすべて英語(figure.ai/careers)で掲載されています。日本語での最新情報を得るには、Figure AIの公式X(旧Twitter)アカウントやLinkedInの日本語情報、ヒューマノイドロボット専門メディアの情報を定期的にフォローすることが推奨されます。